LED胡蝶蘭とは?

LED × 胡蝶蘭

LED胡蝶蘭とは、豊川洋蘭園の高度な栽培技術と新開発のLED照明(太陽光併用)で栽培された胡蝶蘭です。

農商工連携事業計画にて生産、需要の開拓を行う商品は、愛知県豊川市で温室を製造する有限会社豊川温室が開発した独自波長と胡蝶蘭栽培に最適な光強度を有したLED器具を活用して、同じく豊川市で洋蘭栽培を行う豊川洋蘭園が、大輪系胡蝶蘭に対して開発されたLED照射機器によるLED光により多輪化された大輪系胡蝶蘭及びその花弁の高寿命化技術を付加された胡蝶蘭です。
ファレノプシスは日本ではコチョウラン(胡蝶蘭)の名前で親しまれているラン科の植物で、蝶が羽を広げたような形をした花が花茎に沿って整然と並んで咲く様子から胡蝶蘭と呼ばれています。優雅で花もちも良いことから贈答用の高級鉢花として需要の高い植物です。
胡蝶蘭の花弁の数はステムと呼ばれる花弁の付く花茎の長さによって決定されます。これは無限花序と呼ばれる胡蝶蘭の特性であり生産者はいかにステムを伸ばして花芽を多くつけるかに努力を注のですが、しかし根元から順番に咲いてしまう胡蝶蘭の花は、最終花芽(先端部分)の開花までに先に咲いた花の寿命がきてしまい、落花してしまうという大変な問題があり輪数を単純に多くすることは難問とされていました。
太陽光の下で生産された胡蝶蘭は光合成に必要な標準の太陽光波長を受動し、一般的な花芽分化を起こしますが、LED胡蝶蘭を生産するために製造されたLED照明装置は胡蝶蘭の花芽分化において優勢に働く光形態形成反応を有した波長の光を同時に考案した照明器具の吊り下げ器具から胡蝶蘭の上部、約70cm程度の場所に吊り下げ、28wの電力にて各胡蝶蘭に照射します。これによって胡蝶蘭のステムは伸びることとなり花弁が余分につくのです。しかも通常の開花と比較した場合胡蝶蘭の開花速度が促進され短い期間で出荷が可能になり、輪数が多くかつ花寿命の長いLED胡蝶蘭を栽培することが出来ました。さらに胡蝶蘭の多輪化に伴って従来製品よりも豪華に見える仕立て技術を検討し、多輪化されたLED胡蝶蘭が従来よりも様々な場所に設置できるというメリットから、より魅力的な商品を作り出すことが可能になりました。

平成30年1月19日 特許取得済

「胡蝶蘭栽培方法および胡蝶蘭用照明装置」 特許 第 6275432号


花おちと開花期間の低下

胡蝶蘭は花弁の数(輪数)が多いものほど豪華に見える。そのため輪数の多いものは価格が高価になる傾向である。しかし輪数の多いものは、開花までに時間を要する。胡蝶蘭の花弁は順番に咲いていくためである。通常の胡蝶蘭であれば出荷までの開花は10輪で最初の花の開花から50日かかる。このため輪数の多いものほど出荷された後の開花期間が短かいことが問題である。

胡蝶蘭での花おち

最初に咲いた花と最後に咲いた花の開花日が50日以上異なるため全部の花が咲く前に最初の花が落ちてしまう問題。
出荷前に花が落ちることも商品価値損失で問題であるが、出荷後客先や販売店での花おちは顧客や販売店に不満が生じやすく、胡蝶蘭生産ではこのリスクを減らすことが大きな課題である。

豊川温室の現状と課題

豊川温室は、昭和39年に前社長が施設園芸の発祥地、愛知県東三河地方を中心にガラス温室を中心とした農業施設を農家に供給するために設立した。施設園芸温室、ハウスの設計施工とそれに付随する設備機器の供給及びそのメンテナンス、修理改修業務を中心に据え、現在は閉鎖型植物工場の施工から太陽光併用型植物工場の設計施工を行っている。
時代の移り変わりとともに温室環境を研究し様々なタイプのものを供給してきている。
LEDデバイスギャラリー

豊川洋蘭園の現状と課題

豊川洋蘭園は昭和40年より施設園芸を開始、当初主たる生産物はパフィオとミルトニアであった。
しかしながら通年出荷の可能な胡蝶蘭への作物転換を平成7年頃より徐々に実施。平成22年にエアコンの導入に伴って胡蝶蘭の全面生産に踏み切った。
現在の生産規模は、1254m2、出荷量は20000株/年、圃場内部労働力8名(パート含む)と経営規模的には小規模であるが、その品質に定評があり卸売単価は平均を大きく上回る5000円~6000円/鉢の価格を維持している。
高価格を維持するために豊川洋蘭園では厳しい品質検査を行っており出荷仕立て要員が仕立てを終了した後に、再度花弁の品質チェックが行われ、花弁の傷やしわなどが責任者により入念にチェックされる。

豊川洋蘭園から出荷される胡蝶蘭は各市場において平均卸売単価を上回る高級品質としての位置づけをされている商品である。そのため豊川洋蘭園では5年前から圃場の有効利用を目指した回転率の向上と花弁の多輪化に向けての取り組みをスタートさせている。多輪化することは、縮小しがちな胡蝶蘭法人マーケットにおいても有利に展開できるためリーマンショック以降特に重点的に取り組み、『同価格での多輪化による法人需のマーケット奪回』を旗印に台湾苗業者の協力の下、様々なメリクロン苗の導入開花に取り組んだ。しかしながら苗価格を据え置いた多輪化苗は花弁などの厚さなどにも影響することが多く『花の寿命』において問題が発生することがあり交渉時間が問題解決ともなることが多かった。これはステム長を含めた『胡蝶蘭苗の価格と品質』が台湾苗業者供給苗に依存ための問題であった。開花株を購入してから開花までの期間を長くすればステムは長くなるがその場合、回転率が極端に低下してしまい年間出荷量が減少してしまうことになる。これでは単価が上がっても売上は減少してしまう。『同価格での多輪化による法人需要のマーケット奪回』の問題に取り組んでいたときにこのLED照射技術に目を向け早速取り組んだ結果回転数の上昇と多輪化という相反問題の解決糸口が発見できた。

LED光を照射した胡蝶蘭の生産を行うために生産設備を改良工夫する必要があった。
1番目の工夫展は胡蝶蘭を生産する温室設備においてLED光を植物に届けるための器具設置設備の開発である。これにより吊り下げ式のLED照明器具を胡蝶蘭の状態に合わせて簡単に設置できるようになった。2番目の工夫点はLED光を照射された胡蝶蘭の出荷までの状態が確実に把握できるよう合わせて圃場内部の表示看板、生産システムの見える化を図った。これにより商品が確実にLEDの照射されたものであることを明確にして消費者及び販売業者に対しての安心化を図った。

照明器具吊下げ設備の開発

胡蝶蘭生産圃場において従来LED照明装置を取り付ける構造になっていないのが現状である。そもそも電照装置は菊などの作物において電球を吊り下げることができるように農家が考えたものである。
胡蝶蘭生産設備の場合、何重にも遮熱シートや保温シートに天井部がおおわれており
これが開閉するため、天井から器具をぶら下げることは不可能である。
そのため従来通りでは器具を取り付けることが不可能であった。

遮光シートの下にパイプを取り付けることで照明器具を吊り下げる下地が完成した。
次に問題になったのは植物の成長に合わせて高さや器具の位置を調節しなければならないことであった。そこで以下のような部材を利用して器具を動かすことに成功した。

スライド金具、鎖(チェーン)

スライド金具によって照射器具は棚上部のどこへでもそのまま移動可能になり、しかも器具を引っかけるチェーンの数によって一定の高さを保ちながら、ステムの伸長に対応したフレキシブルな照明器具の吊り下げ設備が完成した。

これらを利用して胡蝶蘭の生産に邪魔にならずかつステム伸長に最適な照明器具の高さを導き出す照度を導くための試験栽培を東三河農林水産事務所協力の下実施。以下の結果となった。
この結果を踏まえ検証すると、照度が確保されれば必要以上に近くで照射する必要のないことが理解できた。これによってステムが伸びてきても邪魔にならない高さで吊り下げておけば、同じ品種であれば高さを変える必要のないことが分かった。そこで大輪系の一般胡蝶蘭の場合はステムが伸びてきたときに邪魔にならない60cm-70cmを保持してLED照明器具を吊り下げ放射することとした。上記の結果からみても照射をしない区域と比較して2カ月照射することにより8cm~10cmのステム長の伸長が確保できる見込みとなった。

豊川洋蘭園のLED胡蝶蘭は、2013年10月の第10回 国際フラワーEXPO(通所IFEX) に出展しました。

IFEXでは毎年全国各地の生花店、量販店、卸商、生産者などの花業界関係者や、ホテル・ブライダル関係者、百貨店、インテリアショップ、通販業者などが多数来場、出展社との間で商談が活発に行われます。